2006年09月08日
視察報告(1) Wilhelmiina (8/21訪問)
これから約2週間をかけて視察報告をupしていく予定です。
ぜひご覧いただき、ご意見・ご感想をお寄せ頂ければ幸いです。
Wilhelmiina
所在地 フィンランド ヘルシンキ市
訪問日時 2006年8月21日(月) 10:00~12:00
案内者 施設職員の看護士の女性
Wilhelmiina グループホーム部分外観
1. 施設概要
・居室の種類と入居者数: サービスハウス ・・・66名
高齢者住宅(賃貸)・・・37戸
グループホーム ・・・60名(5名×3ユニット×4階)
ショートステイ ・・・10名(2名×5室)
・ 建築年次: 1995年9月
・ 運営主体: 民間財団
・ 敷地面積: 1400㎡
・ 延べ面積: 1450㎡
・ 構造,階数:木材・レンガ混在、フラットルーフ、5階建て
2. サービス、ケアの提供体制
この施設(特にサービスハウス)の医師は3人体制である。常勤の医師は週に2回、非常勤の専門医は入居時と退去時に診察を行う。看護士は4人で、午前3人、午後2人、夜間1人の24時間体制でサービスにあたっている。グループホーム(以下GH)では専属のスタッフがケアを行う。また高齢者住宅では、入居者の必要に応じてサービスハウス部門の看護士らがケアを提供している。理学療法士、スピーチセラピスト、歯医者などによるケアも受けられる。
3. 入居者の状態
この施設では、高齢者住宅(賃貸)、サービスハウス、GH、ショートステイなどの異なる種類の住まいを提供している。
日常生活の自立した高齢者は高齢者住宅(賃貸)を利用し、まれにケアの必要が生じた場合にもサービスを受けられる環境で暮らしている。
高齢者住宅の入居者はみな自立しているが、入居者に代わって買い物を行うなどのサービス(外部のサービス)も利用されている。また施設からサービスを購入する形で看護士らのケアを受けることもできる。ケアの必要が生じた際に居室からナースセンターへ連絡すると、サービスハウス部門の看護士らが住宅へ出向きケアを提供するという仕組みになっている。また室内外は車イスに対応している。通路の幅が十分であったり台所のシンクが上下可動式であるなど、車イスでの生活になった際にも自立した生活を営むことができるよう配慮されている。
身体的障害のために日常動作に支障のある人や認知症のために自分で生活を営めない人々はサービスハウスへ入居している。彼らは日常的に看護士らのケアを受けている。
訪問時の時点で、サービスハウスの入居者66人中44~48人が認知症を伴っていた。サービスハウス利用者は施設1階のカフェレストランで食事を摂ることができるが、認知症を伴う入居者は各階のリビングで食事を摂っている。また彼らの居室は看護士が頻繁に行き来する通路沿いに配置され、看護婦らの目が十分に届くようにと配慮されている。
GHでは認知症を伴う高齢者が暮らしている。彼らはGH専属のスタッフによってケアを受けている。
ショートステイの主な利用者はパーキンソン病患者である。その多くは第二次世界大戦で出兵した人々で、政府の費用負担によって2週間交代でケアを受けている(2人部屋×5室)。
施設全体の入居者の年齢層は65歳から97歳までであり、高齢者住宅・サービスハウスでは夫婦の入居もみられる。
4. 建築的特徴
・全体の構成
敷地中央にサービスハウスが配置され、GHがつながる。高齢者住宅は独立しており、自分の意思によりセンターを訪れるようになっている。メインエントランス部分にはGH,高齢者住宅、サービスハウスの3つの建物が接している。入り口付近はベンチ、鮮やかな花々・植栽で飾られており、多くの人が佇んでいた。
室内の設えでは、ところどころの家具や壁に使用された濃い青がアクセントカラーとなっている。
テーブル、椅子の置かれた広々としたテラスが各所に設けられている。
・ グループホーム
建物の中央では各階の共用空間が吹き抜けで繋がっており、その光の溢れる共用部分では様々な活動ができるようになっていた。例えば、椅子が並べられ外部講師による作業療法が行われていたり、4階(最上階)にはビリヤード、図書スペースが設けられていたりなどある。各階3つのユニットを持っているが、ユニットへの入り口には共用空間の吹き抜けに面してドアが設けられている。居室は入口横にシャワー・トイレ(一体型)が配され、十分な入り口の幅をもつ。
・ サービスハウス
サービスハウスは1階にレストラン・プール・サウナ、地階にはトレーニング室・ハンドクラフト室・教会をもつ。入り口からすぐ見えるところにレストランがあり、明るい雰囲気の中で入居者・地域の人が訪れ食事を楽しめる。(例えば昼食のビュッフェは8.9ユーロ(約1350円)
プールとサウナは隣接し、車椅子でも専用のプラスチック製のイスで入れるようになっている。各所に十分に手すりが配されていた。(連続して伝い歩きができるよう、また着替えの場所には立ち上がれるように等)
・ 高齢者住宅(室内見学不可)
8階建の建物である。各戸の面積は44.5~74.0㎡。人によって1人暮らし、または2人暮らしで生活している。エントランス入り口は開き戸の自動扉(北欧各国いたるところで目にした)で、車椅子でも出入りに不自由しない。
サービスハウスの共用空間(左側)と廊下 エントランス部分
5. 日中活動
同じ時間帯にも複数の活動が用意されており、入居者(主にサービスハウスとGHの)らは自らの興味に応じて自由に参加することができる。例えば、ハンドクラフト、ウォーキング、音楽、カードゲーム、プール、運動などである。敷地内では小区画に分けてられた庭が貸し出されており、希望者は庭を借りて植物や花を育てることができる。また年に1回程度、地域住民を交えてのイベントが開かれる。
6. 考察
この施設Wilhelmiinaは、フィンランドへ訪れる日本の視察団がまず訪問するところだという。ここでは、日中活動の内容がとても充実し、機能改善・機能維持にも力が注がれている。作業療法・理学療法を行う部屋がそれぞれ用意されており、必要に応じて専門家によるケアが行われる。また住宅の台所を模したコーナーもあり、日常動作の機能改善のためのトレーニングも行われている。
さらに先述の日中活動の中にも手先を動かしたり体を動かしたりするメニューが豊富に用意されており、高齢者が活動を楽しむ中で機能維持を図れるようにと考えられている。
できるだけ多くの動作をできだけ長い間自力でできるよう保つことは、介護の必要となる時期を遅らせ、また高齢者自身が自分の意志で自由に過ごせる時間を長くする。そういった点から、身体的機能の維持は精神的な健康のためにも非常に大切である。
日本でも今後機能維持や改善を重視する見方がさらに浸透し、こういった活動が活発になることを期待する。
1階エントランス近くの中庭
Posted by aya at 17:24│Comments(0)
│北欧視察