2006年10月04日
視察報告(12) Liisaさんのお宅(8/29訪問)
写真1 Liisaさん宅外観 写真2 2階寝室
所在地 スウェーデン マルメ市
訪問日時 2006年8月29日 10:30~11:20
同行者 テル・トシコさん(マルメ市公認ガイド)
Katarina Lindbergさん
(マルメ市庁建築事務所 作業療法士の女性)
1. 概要
Liisaさんはマルメ市内に住む80歳の女性である。48年間暮らした自宅で現在も住み続けている。旦那さんを亡くした16年前から一人暮らしとなった。
住居の構成は1Fがキッチン・リビング・トイレ、2Fが寝室・シャワー・トイレ、3Fが物置である。
2. 改修
○ リフトの設置
リフトは2度に分け2箇所に設置が行われた。3年前に「2階へ上がる階段のリフト(写真3)」、そして訪問した日の2週間前に「玄関階段を上がるためのリフト(写真4)」を設置した。
*つかまって歩くための歩行器は1階と2階の両方に置いている。
現在の2階へ上がるためのリフトは、座って乗るタイプのものである。もし車いすを必要とするようになったら1、2階の両方に車いすを置くか、または外(大きな家の場合は内)へのEVの設置ができる。
写真3 Liisaさんと、2階へ上がるリフト 写真4 玄関入り口に設置されたリフト
○ シャワー・トイレの改修 (写真5)
2階のシャワー・トイレ室では敷居の除去、バスタブの除去などが行われ、壁や床も新装している。改修前は、Liisaさんが足が上がらないため、バスタブに入るのが困難であった。補助器具も利用してみたが無理であったため改修にいたる。
3. 行政からの補助
2.で挙げた改修、そして手押し車などの補助器具の支給(もしくは貸与)はすべて行政からの援助である。これらを行うには審査が必要で、もし1階だけで生活できると判断されたら、ここまでの改修は行われない。Liisaさんの場合、2階にトイレとシャワー、そして寝室もあったためリフトの設置が行われた。そしてホームヘルパーがいないのもこれだけの改修が行える理由である。ヘルパーなしでの自立した生活を支えるために改修が行われているのだ。
改修までの流れは、本人、もしくは家族が改修が必要だと感じたときに作業療法士に電話をする。作業療法士が必要と判断した改修のプランを立て、それを自分で申請する。作業療法士のプランに自分の希望を加えても良い。(実現するかは市の判断)
4.普段の生活の様子
日中は家で手仕事をしていることが多いという。室内はレースで編まれた人形や孫の写真などが、美しく飾られていた。食事は自分で作る。台所にはキャスターのついたイスがおいてあり、座りながら自由、そして楽に台所仕事をできるということだった。台所下に空間がなく、使いづらくないかと質問したが、問題ないということだった。
非常時のために腕にアラームをつけている。押すと地域のアラームセンターへ繋がり、スピーカーで通じ応答がないと自宅へ訪れて、様子を見に来るというシステムがある。
外出は補助器具で行くことのできる距離までは、自分で出かける。そして遠いところへは近くに住む息子に連れていってもらい、息子が不在のときは買い物の際だけヘルパーがつく。
そして週に1回2時間、ビンゴをしにサービスセンターへいく。そこには100人くらいの人が集まり友人との交流を楽しんでいるという。
写真5 改修されたシャワー・トイレ室 写真6 案内してくれるLiisaさんとその息子さん
5. 考察
実際の一人暮らしの方の生活の様子を見れるという、貴重な体験をさせていただいた。
所々に改修の後が見受けられ、その人の状況に合わせた改修が適宜行われていた。作業療法士による、補助器具の適切なアドバイスを受け、自分に合った器具や方法を選択できる。このように、どのようにすればよいか気軽に対処法を知れることが、高齢者が自分の能力を生かし生活するために必要なことである。
足が不自由なため、上下移動が特に困難になってしまった。昔から住み続ける家には段差が多い。
しかしそのような時に、経済的負担がなく改修が行えることで、住み慣れた地域、思い出の残る家に住み続けられる。このことが精神的にも安心し、落ち着いて、そして楽しく暮らしていけるポイントであると考える。
Posted by aya at 21:59│Comments(0)
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